漢方医学とは

漢方医学とは

漢方医学は現代の中医学とは全く異なり、古代日本で形作られた和方医学(皇国医方)に渡来してきた医学(韓医方、漢方、晋唐方、金元方、インド医方等)が千数百年の時間をかけて融合して日本方として完成された医学であり日本固有の医学です。

漢方というよび名は、江戸末期から明治初期にかけて「蘭方」とよばれたオランダ医学と区別するために使われた言葉です。腹診等日本でしか発達していない診察法が存在します。


漢方と五行論について

中国古代の三大文献である「黄帝内経」、「神農本草経」、「傷寒雑病論」は同時に生まれてそれぞれ相関があるかのようにされていますが、各々の背景にある文化圏が少しずつ異なっています。

広い中国大陸で当時は文化的にも距離でも交流なく、それぞれの学説などは地方の学閥により秘匿されていましたので、黄帝内経の五行思想は傷寒論には反映されていませんし黄河文化圏には傷寒論の処方も伝わっていなかったようです(金匱要略には五行を使ったような記載は僅かに見られますが ・・・)


それぞれの文献の背景思想


<黄帝内経=黄河文化圏=鍼灸医学>

種族の祖先は遊牧民族で気候の変化が激しい不毛の乾燥したステップを牧草を求めて転々としていたため、薬が少なく鍼灸医学が発展しました。日常が厳しい自然と隣り合わせで、自然現象に敏感になることから天体や季節の変化などの知識が豊富となり自然哲学へと発展したようです。

天神合一、陰陽説、五行説が発生し黄帝内経へ発展したと考えられます。五行思想は分類が少なく、しかも区分がはっきりしているので病態を推測するには役立つのですが、全てを五行に帰属させるのは臨床的には困難であり自然哲学の要素が強く観念論的になり、実際に治療に用いるには難しいようです。


<神農本草経=揚子江文化圏=単一の生薬による医学・神仙系>

揚子江流域の肥えた土地に定着し神仙家の影響は受けるものの自然物利用の薬物療法が芽生えました。本草とは物産学をも内包する応用博物学ですが、その主な目的を薬効論においており現在知りうる最も古い中国の実用薬物書と言えます。

ただし、この文化圏の民族の性質上、不老長寿、軽身延年を理想とする方向に向かい、疾病治療は二の次にされたようです。


<傷寒雑病論=江南文化圏(長江の南側)=複数生薬の組合せによる医学>

こちらも薬物を利用する治療法ですが、高温多湿、流行病の発生には最も都合良い環境のこの地方では神仙家の影響はなく、殷の伊尹が創始したと伝えられる湯液を用いる治療法の系統となりました。

揚子江文化圏のように特殊な自然物の神秘的な効果には重きをおかず、容易に入手できるありふれた薬物を適当に組み合わせて、その総合効果を十二分に発揮できる方法に発展し純医療的な薬物療法の完成に全力を尽くしました。

傷寒雑病論は治療学書です。当時の多くの急性伝染病に共通する症候群に対して数種類の薬物を組み合わせてより良い治療効果が発揮されるための条件を長い間追求した結果、"一定の薬物を配合した処方"と、その"適応する条件の原則"が見出され、これが「証」となりました。これらの知見を集約した文献が後漢末期に完成した「傷寒雑病論」です。


西洋医学との比較について


<西洋医学について>(高度な診断技術と高度な手術技術と症状を抑える薬物療法)

西洋医学と漢方医学は発生より18世紀までは内科学中心であり

(1805年華岡青洲による通仙散(漢方薬)による乳癌の全身麻酔手術の成功(本来の世界初の全身麻酔手術))
1846年ウィリアム・モートンによるエーテル麻酔(世界基準で初の全身麻酔手術)
1850年代パスツールにより感染の原因が微生物であることの発見
1867年リスターによる石炭酸での消毒法の発明
1895年レントゲンによるX線発見
1929フレミングによるペニシリンの発見

と言うように19世紀に入り解剖学や微生物学を主体として、"形態の異常"や外来微生物による"感染症"に対しここ100年の間で急速に発達してきました。西洋医学は精密な解剖学的知識を背景に病気の診断のための技術・設備が豊富にあり(採血・病理検査・MRI・エコーや顕微鏡など)、病気の分類を解剖学的・形態学的(要は機能では無く見た目)に精確に行うことができます。またその知識を応用した外科手術は漢方医学では真似出来ない優れた治療手段です。しかし西洋医学的検査では生体機能面の失調は捉え難いため、検査では異常無いが症状を訴えるものを"不定愁訴"とみなし治療対象外になるようです。

西洋医学で最も特筆するべきクスリは"抗生物質"です。細菌感染症に対し強力な一手であり、西洋医学の急激な進歩の一翼をになっています。ただし使用については高度な細菌学・薬理学知識が必要であり、現代では誤使用や過使用により副作用の増加や耐性菌の出現が問題となっています。

西洋医学で使用するクスリは精製もしくは化学合成した単一の成分が主体であるため、解熱鎮痛剤や抗アレルギー薬、降圧薬など一つの症状に対し薬理学上の作用点を抑えてピンポイントに症状を和らげるものがほとんどであり、治癒させるより症状を抑える性格が強いものがほとんどです。

失礼な言い方を許していただけるのなら、”科学的に原因を解明し、その原因に対しての治療を行おうとしているが、科学の発達に依存するため未だ十分な治療効果を得ていない”のが西洋医学であるといえます。


<漢方医学について>(解剖学の不備と外科治療の欠如と治癒可能な薬物療法と養生法)

漢方医学は診断には四診といって望診、脈診、切診、腹診の技術を使いますが、大昔の人体認識がベースにあるため間違った知識も多く存在します。例えば飲んだ薬を出産した子供が握って出てくる等の伝承です。

西洋医学と異なり解剖学的異常では無く生体機能の変化によって生じる複数の症状からなる"証"に対し複数の生薬を組み合わせて治癒効果を発揮させる治療方法をとります。主に症状と四診による薬物の組み立てを作るため風邪から西洋医学では不定愁訴として切り離される症状や未知の病気にまで幅広く対応できることがメリットとなります。

また現代よりも社会状況や環境衛生状況が悪い時代において急性感染症への対策を中心に発達したため、単に病気を回復させるだけで無く、体力を回復させ、次の感染を生まないための工夫が養生法として確立されています。

こちらも失礼な言い方を許していただけるのなら、”検査法が徒手によるもの主体のため診療技術の伝承が難しく、手術等の直接的な治療手段を持たないが、症状と四診だけで未知の病気に対しても治療を行える”のが漢方医療であると言えます。






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大塚敬節 創元社(大阪)発行年月:2001年05月 ページ数:273p サイズ:単行本 ISBN:9



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