湿潤療法について

<湿潤療法とは>


創傷に対して"消毒とガーゼ"を使う方法とは異なり、消毒は使わず"洗浄"を行いガーゼは使わず"創傷被覆材"で覆って治療する方法です。


消毒を使わないので痛みも少なく、創傷被覆材を使うので創傷部分の乾燥を防ぎ、早く効果的に治療することができます。


<消毒とは>


1850年代ルイ・パスツールによる感染の原因が微生物であることの発見


1850-1860年ゼンメルワイスの"手洗い"による産褥熱の予防の提唱


1867年ジョゼフ・リスターによる石炭酸を使用した消毒法の開発による手術熱の減少


1876年ロベルト・コッホによる炭疽菌の純粋培養成功により細菌が動物の病原体であることの証明


上記でわかるように1800年台後半(日本では幕末から明治)になって、現代では当たり前と思われている"皮膚についた微生物により感染が生じる"という事が発見されたのです。(それまでは"傷は化膿することで治る"と言われていたそうです。)

皮膚に付いた細菌を除去するわけですから、細菌を殺す"消毒"が有効な手段と考えられ、以降は消毒法の確立に向けて医学は進んで行きました。

医療系ではイソジン・ヒビテン等、一般家庭ではヨードチンキや赤チン(マーキュロクロム液)、マキロン等様々な消毒薬が出現し、十数年前まで"傷は消毒するのが当たり前"といった常識が出来上がっていったわけです。


<消毒により組織で何が起きているか>


(濃度にもよりますが)消毒薬とは細菌に対してだけで無く、当然人間の体細胞にも殺効果を示します。また細菌はバイオフィルム等外界からの侵襲に対しバリア機能を持ちますが、人間の体細胞は皮膚の守りが無いと外界からの侵害に非常に弱い構造になっています。


そのため傷の中では消毒薬に耐性がない細菌はもちろん死滅しますが、それ以上に傷の部分のむき出しの体細胞が消毒により死んでしまいます。更に死んだ体細胞は細菌の栄養になるため、残った細菌の増殖を促すことになります。

また皮膚の構造から毛包(毛の根元)にある細菌までは消毒薬が届かないので、その部位では細菌は生き残ることになります。

更には傷では神経が剥き出しになっているため、消毒により神経障害が生じ非常に痛みます。(マキロンやイソジン・・・傷にしみますよね)


<消毒の是非>


<病院で入院したり外来通院で消毒する場合は、通常1日1回です(2~3日に1回もありますが)。これは細菌の増殖に合わせたわけでなくニンゲンの生活の都合で1日1回なのです。


因みに病院で良く使用するイソジン消毒の効果時間は約6時間です。しかし効果時間を過ぎると皮膚の細菌は戻ってきます。

という事は1日1回の消毒では6時間の無菌状態と18時間の無消毒状態が繰り返されるわけです。

消毒効果が1日のうち1/4しか持続しないという事は今までしていた消毒はしてもしなくても変わらないということであり、組織障害で痛みを生じたり、障害された組織で残りの細菌が培養される環境ができたりとデメリットのほうが多くなると考えられます。

傷を痛めないように消毒薬を排除して、細菌感染を防ぐため創部を綺麗に洗い流して余計なタンパク質を排除するのが湿潤療法です。

過去に細菌感染を防ぐために必要と思われていた消毒は、洗浄して創部の異物を取り除く事だけで不必要となります。(もしそれでも万が一、創部の感染が生じても表面から消毒をする意味は無く、細菌にのみ有効な抗生物質を使用したほうが効果的です。)


<ガーゼについて>


ガーゼは"傷を覆うもの"として広く認識されていましたが、さてガーゼは本当に傷をきれいな状態で覆えるのでしょうか?


覆うものとして考えた場合、ガーゼは遠目には白い一枚の布ですが、繊維の目が粗いためニンゲンよりはるかに小さい細菌にとってはどんなに重ねても穴だらけの状態です。また、目が粗いため乾燥しやすく、更には素材的にも傷にくっつきやすい(剥がす時に痛みや出血が生じる)欠点があります。


また覆われる側を考えると、皮膚の上はどんなに消毒しても6時間程度の無菌状態ができるだけで、消毒の効果時間が過ぎれば皮膚は細菌だらけになります。更に傷から出た浸出液(ジュクジュクになる液体)がガーゼに吸着されるので、浸出液に含まれる傷を治す物質が役に立たず、より治療を阻害することが可能になります。


細菌だらけの部位をいくら滅菌しても穴だらけの布で覆ったところで、なんの防御にもなりませんし、乾燥させ傷をくっつけて交換の度に傷を痛めるとなるともう害悪以外何者でも無くなります。

ガーゼを使用しないことで創部への癒着を防ぎ、創部からの浸出液を保ち、皮膚表面の乾燥を防いで傷の治癒を促すことができるのが創傷被覆材です。

ガーゼは外科手術や処置の際に傷からの出血を吸い取ったり、洗浄後に拭き取り綺麗にする"タオル"に近い機能はありますが、創部を覆うものとしては不十分な過去の素材のようです。



<湿潤療法の1例>


症例は2歳の男の子ですが、2日前にうどんのつゆがかかって受傷、近くの病院で軟膏をもらって処置していたのですが、親御さんが心配になって当院受診されました。


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来院時の写真です。白い線維物と破れた水疱の一部が背中に張り付いているのが見えます。
幸い、創部周囲の感染は生じていない様です。


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洗浄後です。生理食塩水(家庭の場合は水道水やぬるま湯でも可能です)で洗い、余計な線維物や感染を起こす可能性がある水疱の残骸等いらない皮膚をできるだけ除去しています。
この後はワセリンを塗ってプラスモイストを貼り付けるのみです。(浸出液が多ければワセリンも不要です)
日常の処置は、自宅で可能です。浸出液の多さにもよりますが1日1回シャワーで流してワセリン塗ってプラスモイストを貼るのみです。傷の周囲の発赤や痛み等あれば即受診ですが、何もなくても数日おきに受診していただき創部の確認を行います。


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ちょうど1週間後の再来時の写真です。水疱ができる熱傷(2度熱傷)の場合は湿潤療法で2週間くらいかかるのですが、小さいお子さんのため再生力がいいのか親御さんの処置が良かったのか1週間で感染もなく綺麗に回復されました。まだ再生した皮膚に赤みがあるのですが、消退までには時間がかかります。
以降は皮膚を保護してシミになるのを防ぐため6ヶ月くらいは日光に当てないように日焼け止めをすると効果的です。この症例では背中ですのでハダカにならない限りは心配なさそうですが。




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